南瞻部洲萬國掌菓之圖

番号 179
名前 南瞻部洲萬國掌菓之圖
読み なんせんぶしゅうばんこくしょうかのず
サイズ(cm) 143.3 x 117.5
彩色 木版
作者 浪華子(鳳潭)
版元 文台軒宇平 蔵版
作成日 宝永7年
作成日 1710年
地域 世界
解説 日本で最初に刊行された仏教系の世界図である。その直前に、西洋の地理知識を部分的に取り入れる形で久修園院(枚方市)の住職宗覚が手書きで作成したうちわ型南瞻部洲図を一部改訂している。作者の浪華子は、華厳寺の開祖となった学僧鳳潭(ほうたん)(1654~1728)である。彼によって開かれた華厳寺は、京都の西郊に現存し、鈴虫寺という通称で知られる(京都市西京区)。古代インドの仏典『倶舎論』等で説かれた世界は、太陽や月が頂上付近を回っているとされる須弥山=メール山を中心に、水平・垂直方向に広がる立体構造になっており、人間が居住しているのは、水平方向に同心円状に広がる7番目と8番目の山脈の間にある大海の南側に浮かぶ大陸、すなわち「南瞻部洲」であるという。この大陸は大部分が天竺(インド)とされ、北に広く、南に狭いという形状は現実のインド半島に似ている。とはいえ、元来これらは、地理的な正確さを追求したというよりも、教義を図解したものである。天竺図で現存最古の図は、法隆寺に伝わる貞治3年(1364)の「五天竺図」である。これに対して本図は、五天竺図に西洋式世界図の情報を部分的に取り入れたもので、図の左上のヨーロッパは小さく島状に広がり、アフリカ大陸はその南方にある。一方、目を右に転ずると、アメリカ(「亜黒利加」)は日本の南に位置する島として描かれている。図の中央に渦を巻く形で配された「阿耨達(あくたつ)池」は、ガンジス川・インダス川・オクサス川(アムダリア川)・タリム川の四大河の源流として、河流を四方に延ばすように描かれている。その南方がインドである。その右上に中国が配され、その東方に浮かぶ日本列島は、山城州など各国に分かれ、中世由来の行基図における俵形の集合体からは逸脱して、実情に少しは合わせた形と見なされる。とはいえ、広さは、インドや中国に負けないほどに誇張して描かれている。出版元は、本図のような「文台軒宇平 蔵版」の他、京の永田調兵衛蔵板も認められ、再版も含めるとかなりの数が出回ったのであろう。本図は墨一色であるが、手彩色が施されたものも認められる。
要約 日本で最初に刊行された仏教系の世界図である。その直前に、ヨーロッパやアメリカ等、西洋の地理知識を部分的に取り入れる形で久修園院の住職宗覚が手書きで作成したうちわ型南瞻部洲図を一部改訂している。作者の浪華子は、学僧で京都・華厳寺の開祖、鳳潭(1654~1728)である。版元は、本図のような「文台軒宇平 蔵版」の他、京の永田調兵衛蔵板も認められ、再版も含めるとかなりの数が出回った。
キーワード 仏教系世界図、うちわ型南瞻部洲図、華厳寺
参照 海野一隆『地図の文化史-世界と日本-』八坂書房(1996年)。織田武雄『地図の歴史 日本篇』講談社(1974年)。長岡正利「国土地理院所蔵地図史料展観Ⅰ 南瞻部洲萬國掌菓之圖」国土地理院広報、第319号(1995年)。三好唯義・小野田一幸『図説世界古地図コレクション』河出書房新社(1999年)。

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