上野国全図

番号 269
名前 上野国全図
読み こうずけのくにぜんず
サイズ(cm) 127.0 x 105.6
彩色 木版 色刷 
作者 村上吾雄
版元 上州高崎 菊屋現兵衛 他12 及 東都 菊屋幸三郎 共版
作成日(和暦) 安政2年
作成日(西暦) 1855年
地域 群馬県
解説 江戸時代の後期から末期、つまり19世紀前半から中頃にかけて国別の地図(現在の分県地図にあたる)が多数出版される。この図は北方向を上にした上野国(現群馬県)の図であるが、山地は緑色で、また主要な道筋は朱線で目立たすなど、多色刷りの美しい刊行国絵図である。上野国の刊行図としては、他に刊年不記のものが2件ある。図の上部中央に図名「上野国輿地全図」と記される。図の左端下に、本図の凡例を配置して図中の記号を掲げており、続いて東都村上吾雄著と著者名がある。村上吾雄は江戸の区分地図である江戸切絵図も手がけている。凡例枠の右にある四角枠には「産物」と「温泉」が挙げられ、高崎の絹、桐生の織物、伊香保や草津の温泉名が書かれる。地図の中には村名はじめ多数の地名や道筋が描かれるが、図の右端の枠内には上野国の郡名とそこにある村の数、「里ノ名」「名所」などが記されている。また、図の左上にある四角枠には式内社はじめ、上野国内の神社が列記されている。この1枚の地図に地誌情報を満載し、上野国全体の地理と国の概要を紹介している。左下隅にある四角枠の最後には大量の書林名が記されている。それは地元(高崎、富岡、下仁田、安中、前橋など)の上州書林13軒と、江戸馬喰町二丁目菊屋幸三郎の組み合わせである。これはおそらく、江戸の菊屋が制作した国絵図を地元書林が販売するという意味であろう。本図にはこの書林部分の組み合わせが異なる異版(上野国、江戸、京の書林+菊屋幸三郎)が別に2種類あり、国図の出版事情を研究する上で、また関東一円の国図を刊行した版元菊屋幸三郎の実態を解明する上でも、この上野国図は極めて貴重な資料を提供している。
要約 この図は北方向を上にした上野国(現群馬県)の図であるが、山地は緑色で、また主要な道筋は朱線で目立たすなど、多色刷りの美しい刊行国絵図である。地図の中には村名はじめ多数の地名や道筋が描かれるが、図の右端の枠内には上野国の郡名とそこにある村の数、「里ノ名」「名所」などが記されている。また、図の左上にある四角枠には式内社はじめ、上野国内の神社が列記されている。この一枚の地図に地誌情報を満載し、上野国全体の地理と国の概要を紹介している。左下隅にある四角枠の最後には江戸の菊屋幸三郎と13軒の地元上州書林の名が記されている。
キーワード 刊行国絵図、上州書林
参照 国絵図研究会編『国絵図の世界』柏書房(2005年)。三好唯義「近世刊行国絵図の書誌的検討」(葛川絵図研究会編『絵図のコスモロジー 上巻』地人書房、1988年)206-225頁。

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