和州奈良之図

番号 283
名前 和州奈良之図
読み わしゅうならのず
サイズ(cm) 57.0 x 43.5
彩色 木版 手彩色
作者 (項目なし)
版元 絵図屋庄八
作成日 天保15年
作成日 1844年
地域 奈良市
解説 「奈良大仏前」に店舗を構えた絵図屋庄八は、本図のような奈良の町絵図を多数出版している。右上に「和州奈良之図」の内題を掲げた本図は、左下に「天保十五甲辰五月改」と記している。ほぼ東を天に置き、左上に東大寺、右上に春日大社を配する構図は、川の上流ないしは山を天に置く原則に基づいたもので、奈良の町絵図ではお馴染みである。本図も、名所案内図の性格が強く、見やすさと重要地物の強調を徹底させ、見どころの案内も要領を得ている。奈良町は、古代に営まれた平城京の外京を淵源とし、東大寺や興福寺などの門前町として中世に発展し、市街地化した。近世には天領となり、奉行が任命された。彼の詰め所である「御奉行所」は、本図でほぼ中央に配された興福寺の左下方向に大きく描かれ、黄土色に着色されている。注記された寺や堂舎名を囲んだ外枠全体には朱を塗り込んでいる。観光の面について考えると、東大寺の大仏が元禄5年(1692)に修造され、続いて大仏殿が再建されたことが大きい。大仏殿の落成供養が大々的に執り行われたのは宝永6年(1708)である。本図における大仏殿は、俯瞰図の形で描かれている。町中では各町名が描かれる他、川には藍色が与えられている。ほぼ中央の猿沢池を初めとした池も、同様に藍色である。東方の春日山などの山には雲が薄くたなびき、北や西方に配された寺の周囲に描かれた雲に塗られた藍色も、目を引く。山を彩っている樹木は、墨色の上に緑色が塗り込まれている。墨色以外では、以上の4色が認められる。なお、春日山とその南、鹿野園を麓に配した山との間には「にんにく山」などが雲間から見えている。図の周辺、欄外に目を移すと、左上に「春日大宮御祭」すなわち春日御祭などの祭礼や二月堂・大仏殿の説明を置き、左下に「八景」、下辺には「南都七大寺」を列挙している。その右に「さかい 十一り」以下、11カ所の里程が列挙されているが、堺までの距離は、図中の右下、すなわち西南隅にも施されている。その注記よりも下には「ほうりう寺」とある。
要約 「奈良大仏前」に店舗を構えた絵図屋庄八が出版した奈良の町絵図の一つで、天保15年(1844)の出版である。「和州奈良之図」を内題とし、奈良の町絵図ではお馴染みの、ほぼ東を天に置く構図が採用されている。名所案内図の性格が強く、見やすさと重要地物の強調を徹底させ、見どころの案内も要領を得ている。川や池、雲に与えられた藍色、山を彩る樹木に対し墨色の上に塗り込まれた緑色など、4色が認められる。
キーワード 絵図屋、庄八、町絵図、名所案内図
参照 奈良大学総合研究所編『奈良大仏前絵図屋筒井家刻成絵図集成』奈良大学総合研究所(2002年)。奈良大学総合研究所編『大和奈良地域の観光に関する学術研究-伝統と課題-』奈良大学総合研究所特別研究報告書、奈良大学総合研究所(2002年)。山近博義「近世奈良の都市図と案内記類-その概要および観光との関わり-」奈良女子大学地理学研究報告、第5号(1995年)。

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