世界地図帳

番号 177
名前 世界地図帳
読み せかいちずちょう
サイズ(cm) 18.0 x 22.6
彩色 銅版 手彩色
作者 サンソン
版元 (項目なし)
作成日(和暦) (項目なし)
作成日(西暦) 1683年頃
地域 世界・アジア・日本
解説 フランスにおける近代地図作成の創始者となった王室地理学者ニコラ・サンソン(Nicolas Sanson 、1600~1667)の息子ニコラス(同名)が出版した世界地図帳。世界で最大の地図印刷所であったアムステルダムのブラウ家の工房が1672年に全焼し、夥しい原図の銅版や印刷機などが灰燼に帰した。それまで繁栄を誇っていたオランダの衰退もあって、翌73年のヨアン・ブラウ没後は、世界地図作成事業の中心はフランスに移った。大ニコラス・サンソンはオランダに近いピカルディー地方の出身であった。大ニコラスと彼の息子たちは300以上の地図を出版し、伝統的地理学の研究者であった大ニコラスは王に地理学を講じている。サンソンの最初の世界地図帳は100図を収めて1654年に出版された。第2版(1658年)は113図、1670年には170図を収録し、1695年にいたるまでフランスで最もよく売れる地図帳であったとされる。本書の世界地図帳は1685年に出版されたもので、大陸(州)別に編纂されており、ヨーロッパ(52頁、地図10点)、アジア(102頁、地図18点)、アフリカ(98頁、地図18点)、アメリカ(82頁、地図15点)からなる。日本は「アジアの島々」の筆頭(79~85頁)で紹介されており、その末尾(85~86頁)では蝦夷地TERREE DE JESSOも紹介されている。しかしながら、本書のアジア図に示された日本列島の形状と、収録されている日本図の形状が異なっている点は留意すべきである。アジア図に掲載の日本図は、いわゆる「ブランクス/モレイラ型」もしくは「ブリエ型」の形状を示すが、個別図の日本図は四国の形状が長方形をなす「ダッドレー/ヤンソン型」を呈する。この形態の日本図は、大ニコラがすでに1652年に発刊したアジア地図帳の中で用いており、本書には色合いを変えて1652年図が再録されているのである。同様にアジア図に掲載されている他の国・地域について個別図と比較してみると、アジア図では独立島としては描かれていないパプアニューギニアが、個別図では独立島になっている点を除くと、いずれもアジア図の記載と個別図とは相応に対応している。異様に大きく描かれている蝦夷も含め、極東の日本は当時のヨーロッパ人にとって遠い国であったといえる。
要約 フランス近代地図作成の創始者となったニコラ・サンソンの息子が1685年に出版した世界地図帳。1654年の初版以降、サンソン家の世界地図帳は版を重ねた。本書のアジア図に示された日本列島の形状は「ブランクス/モレイラ型」もしくは「ブリエ型」であるのに対し、個別掲載の日本図は1652年のアジア図地図帳に収録された「ダッドレー/ヤンソン型」日本図を再録している。蝦夷は、異様に大きな陸地として描かれている。
キーワード 世界地図帳、ニコラ・サンソン、日本図、蝦夷
参照 海野一隆『地図の文化史 世界と日本』八坂書房(1996年)。織田武雄『古地図の博物誌』古今書院(1998年)。OAG・ドイツ東洋文化研究協会編『西洋人の描いた日本地図-ジパングからシーボルトまで-図録』OAG・ドイツ東洋文化研究協会(1993年)。R.V.トゥーリー・C.ブリッカー/矢守一彦(訳)『世界古地図』日本ブリタニカ(1981年)。九州大学総合研究博物館HP。

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