懐宝甲斐国絵図 完

番号 270
名前 懐宝甲斐国絵図 完
読み かいほうかいのくにえず かん
サイズ(cm) 92.0 x 69.0
彩色 木版 色刷 
作者 (項目なし)
版元 村田屋孝太郎
作成日(和暦) 天保13年
作成日(西暦) 1842年
地域 山梨県
解説 江戸時代の後期から末期、つまり19世紀前半から中頃にかけて国別の地図(現在の分県地図にあたる)が多数出版される。ただ、それらの先駆けともいうべき図が18世紀においてみられる。刊行された国図の中で最も古い刊年を記すものは宝永6年(1709)「河内国絵図」で、他の畿内諸国(大和、山城、和泉、摂津)やそれらの周辺である近江や播磨の国図が、18世紀において刊行を見る。甲斐国に関しては、元文5年(1740)にすでに刊行を見るし、また現在判明しているだけでも10種類を超える多くの図がある。天保13年の識語をもつ本図も、識者と書林の差異から4種類も存在していることが判っており、刊行国図の分野では特色ある国といえよう。また、国図の刊行という観点からは、甲斐国図はその刊行の担い手がほとんど地元のもので占められている。出版の主流を占めていた江戸や京、大坂といった地域の版元があまり関わっていないことが、他とは異なる特徴として挙げられる。この図は北方向を上にした甲斐国(現山梨県)の図で、河川などの水系は水色、山地を緑色、主要道筋を朱線で目立たせるなど、多色刷りの美しい刊行国図である。図中に図名は無いものの、図の下部には富士山を描き、このことは甲斐国図の一般的な特徴である。また、甲府城下は城下町絵図をはめ込み、町割りなど特に詳しく描いている。地図下部の地図記号を示した四角枠には、神社、仏閣、古跡、駅宿、温泉、関所、道筋が記号化されているが、その前には郡ごとに色分けがされている。図中には、村名はじめ多数の地名や道筋が記されるが、凡例記号の所にあるように村々はその属する郡に決められた色が付されており、一目で各郡の範囲や村の所属が判別しやすくなっている。
要約 甲斐国の刊行国図は、現在判明しているだけでも10種類を超える多くの図がある。この図は北方向を上にした甲斐国(現山梨県)の図で、河川などの水系は水色、山地を緑色、主要道筋を朱線で目立たせるなど、多色刷りの美しい刊行国図である。この図には、識者と書林の差異から4種類の異版が存在していることが判っている。図の下部には富士山が描かれているが、このことは甲斐国図の一般的な特徴である。また、甲府城下は城下町絵図をはめ込み、町割りなど特に詳しく描いている。村々には決められた色が付されており、一目で各郡の範囲や村の所属が判別しやすくなっている。
キーワード 刊行国図、甲斐国、富士山
参照 国絵図研究会編『国絵図の世界』柏書房(2005年)。三好唯義「近世刊行国絵図の書誌的検討」(葛川絵図研究会編『絵図のコスモロジー 上巻』地人書房、1988年)205-225頁。

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